男と女と男とベッド(後編/ヤムチャ目線)
信じられないことをするやつらだ。本当に信じられん。


今朝方、俺は修行からC.Cに帰ってきた。何でそんな時間に帰ってきたかって?そりゃあいろいろあるさ。まずヤッホイからカリンまで2時間だろ。それから西の都まで3時間…いや、そんなことはどうでもいい。今問題にするべきは、そんなことじゃないはずだ。
皆が寝入っている中、俺はブルマの部屋へと向かった。別に何かしようと思ったわけじゃない。ただ寝顔を見るだけさ。趣味悪いか?それくらい彼氏の特権だろ。
部屋のロックは外した。ブルマは俺にだけはパスナンバーを教えてくれていたんだ。
あいつはベッドの中にいた…

悟空と一緒に!

何で悟空がいるのかって?そんなこと俺が知るものか。ああ、服は着ていたさ、着ていたとも。だけど、問題はそんなことじゃないだろう。

何で一緒に寝てんだよ!?

そりゃブルマと悟空は友人さ。仲のいい友人さ。俺たちの誰よりも、つきあいが古いことだってわかってる。だけど、おまえら大人だろ!大の大人が一緒のベッドで寝るかよ!
俺は眩暈に襲われた。叩き起こしてやろうと思った。だが…
…………
……
…ブルマと悟空だぞ?
恐ろしすぎる相手じゃないか。あいつらほど敵に回して、勝ち目の無い組み合わせもあるまい。
ひょっとしてこれは夢でいつか覚めるんじゃないかと俺は願い、しばらくそこで待ってみることにした。
メカやパーツのごった返すテーブルで、痛む眉間を押さえつつ、俺が気長に待っていると、
「きゃああああー!!」
寝室からブルマの声が聞こえた。

…夢じゃなかった。

「何してんのよ、孫くん!」
「ちょっと、起きなさいよ!」

…やれやれ、出番か…

悟空はまだ寝惚け眼で、半狂乱になりつつあるブルマに枕をぶつけられていた。…俺はこれほど寝起きのいいブルマを見たことがない。
ブルマが許したわけではないことは何となくわかったが、それで俺の気持ちが治まるはずもなかった。俺は精一杯冷たい声音で言ってやった。
「…おまえら、何してるんだ?」
ブルマと悟空は俺の姿を認めると、一瞬にして動きを止めた。そして言ったもんだ。
「あら、ヤムチャ。帰ってたの」
「おっす!」
おっす、じゃねえーーー!!
「おまえら、何してたんだ!?」
俺は同じ台詞を繰り返した。ブルマと悟空は、2人顔をきょとんと揃えて言った。
「何って、寝てたのよ」
「もう起きたけどな」
おまえらなあ…
何でそんなに平然としてるんだ。ブルマ、おまえもさっきと態度違いすぎるだろ!!
「何怒ってんのよ?」
「怒るに決まってるだろうが!!」
悟空はベッドの上に胡坐をかきかき、気の抜けた顔で俺たちを見ている。傍観者面してんじゃねえ!!
「悟空!」
俺はビシリと悟空を指差し叫んだ。
「おまえのことは信用してるけどな。それとこれとは話が違うぞ!!」
俺のこの台詞をブルマが聞き咎めた。
「ちょっと、ヤムチャ!」
腰に手を当て仁王立ちで俺に迫る。
「失礼なこと言わないでよ。あたしと孫くんで何か起こると思ってるの!?」
おまえ、文脈が変だぞ。
っていうか、何で俺が責められてるんだ。
「そういう問題じゃないだろ!」
「何よ!ちょっと一緒に寝ただけでしょ!!それくらい許しなさいよ!!」
何だと?
「だいたい勝手に入ってきたあんたが悪いんじゃない!!」

…そんなのありか?…




俺は敗北した。悟空が朝食をしこたま腹に詰め込む横で、俺はブルマにこっぴどく怒られていた。
何かが間違っている。
それが何かもわかっている。だが…
俺はブルマと悟空の顔を交互に見やった。

そして運命を甘受することに決めた。
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