The kiss of life
ふ、不覚…
まさか本当にうつされるとは…

「あ…あったま痛〜い!!」
ブルマはベッドに倒れこんだ。

「天罰だな。罰が当たったんだ」
自室のベッドに横たわるブルマを見下ろしながら、腰に手を当てヤムチャは言った。
「何言ってんのよ!あんたがうつしたんでしょ!」
「おまえが自分で持ってったんだろうが」
「本当にうつるとは思わなかったのよ!!」

「一体何の話ですか?」
薬と水差しの乗ったトレイをサイドテーブルに置きながら、プーアルが訊いた。
ウーロンが非難するような口調で切り出した。
「ヤムチャがうつしたって言うけどよ、おまえ、ヤムチャが寝込んでる時ほとんど会ってないだろうが。忙しい忙しいって言ってよ。恋人の看病もしないなんて、本当冷たい女だぜ」
「あ、ウーロン、それは1度」
「わっ!」
ヤムチャとブルマが同時に声を張り上げた。
ウーロンが驚いて2人を見つめる。
「な、何だよ、2人して…」
「何でもないわよ!あんたたち、もう行きなさい!」
「そうだプーアル、後は俺がやっとくから、な?」
すごい剣幕でまくしたてるブルマと、さりげなく誘導しようとするヤムチャの意見が珍しく一致していることを見てとって、プーアルは首を傾げた。
「どうしたのかなあ、2人とも」
「何かあったな、あれは」
2人、廊下でひそひそと言葉を交わす。
「何かって?」
「例えばだな〜…」

「ウーロン!」
すかさずブルマがドアの向こうから咎めた。
「あんた口が過ぎるわよ!あと、お茶飲みたいから持ってきて!」
「おれはおまえの召使じゃないっつーの!」
文句を言い言い、ウーロンはキッチンへと消えた。

「さあて、どう料理してやろうか」
邪魔者どもが消えたと見るや、ヤムチャは彼らしくもなく居丈高に言い放った。
「はあ?何言ってんの、あんた」
「俺はな、あの後大変だったんだ。おまえにも味わってもらわなくちゃな」
「な、何よー。ちょっとキスしただけじゃない。何が大変だったって言うのよ〜」
「そんなこと言えるか!」
ヤムチャは顔を真っ赤にして怒鳴った。
「何よー、イチャモンつけないでよね」
わけわかんない、という表情でブルマは口を窄めた。
「あんたと違って、あたしは本ッ当に辛いんだからね。どうしてくれんのよ」
「治してやるよ」
ヤムチャは待ってましたとばかりに、ブルマの顎に手をかけた。
「ちょ、ちょっと、何すんのよ」
「うつせば治るんだろ、ええ?」
「…あんた人が変わってるわよ」
「気のせいだ」

ブルマの下唇を親指でそっとなぞると、彼は自分のそれを重ねた。
包み込むように覆うと、上唇を優しく噛む。
ブルマの唇はすぐに頑なさを解き、それでもまだ幾分受動的に、ヤムチャを受け入れた。それを突き崩そうと、彼がさらに熱くなる。
「ん…」
(ダメ…)
さからえない圧力。
やがて舌が内部に侵入してきて…

ヤムチャの手が胸元に伸びてきて、さすがにブルマは我に返った。
「ちょっと、そこまでやる気!?」
「何だよ、おまえだってその気のくせに」
「あ、あんたね〜…」
説得力のない瞳でブルマが抗議しかけたその時。

「よー、入るぜー」
ノックもせずにウーロンとプーアルが部屋に入ってきた。
ほとんど抱き合っていた形の2人はベッドの上で飛び上がり、ヤムチャにいたっては実際に2m後飛してみせた。

「…何やってんだおまえら」
目撃してはいないものの雰囲気で察したらしいウーロンが、じっとりとした目つきで2人で見やる。「けっ」と軽く毒づくと、荒々しくお茶をテーブルに置いた。
こちらはさっぱり要領を得ない様子のプーアルに、面倒くさそうに声をかける。
「あー、バカバカしい。行こうぜ、プーアル」

「ちょっと待って!」
立ち去ろうとする2匹をブルマは慌てて引き止めた。
「ウーロン、プーアル、あんたたちここにいなさい!」
「何だよ、さっきは出てけって言ったくせに…」
「いいから!いなさい!」

微妙な場の雰囲気に、プーアルが怪訝な顔で訊ねた。
「何かあったんですか、ヤムチャ様?」
ヤムチャは惚けたように窓の外を見ていた。
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