Trouble mystery tour Epi.8 (6) byY
さて、城を後にした俺たちは、双子の言っていたバスに乗り、またもや揺れの激しい二階席に座り込んで、街へと戻った。ちなみに、この二度目の乗車ではっきりしたのだが、この揺れは運転手の技量のせいではない。車体の性能によるものだ。もしくは道路の手入れの悪さ。運転手も道筋も違うのに、揺れ具合がまるっきり同じなんだもんな。
駅の手前、先ほどエアレールの中から目にした繁華街の入口で、バスを降りた。周りを見るなり、ブルマは言った。
「ふっるい街ね〜。それもレッチェルなんかとは、また違った古さだわ」
「その辺の路地からガンマンとかが出てきそうな雰囲気だよな」
「あら、それなら昨夜もう出たじゃない」
「ああ、女ガンマンな…」
天津飯のやつも、さっさと捕まっちまえばいいのに――俺みたいに。昨夜とそしてその前に会った時のランチさんの様子を思い出して、俺は思った。そして少しは修行をサボりやがれ。――俺みたいにな。
これは自嘲ではない。その証拠に、俺は結構楽しんでいた。この繁華街のようなバザールのような蚤の市のような、雑多な街の雰囲気を。
「にいちゃん、ナイフ見てってよ。ナイフは真の男の道具だよ。純銀製だよ。切れ味も最高、痺れるよ〜」
「ふうん、なかなか格好いいな。でも俺、そういうのはたいして必要ないんだよなあ」
「たいしてどころか、まったく必要ないでしょ!」
「おにいさん、煙草いかが?たったの100ゼニーよ」
「ああ、煙草ね。へえ、地元産か。でもせっかくだけど、俺あんまり吸わないんだよ」
「あんまりどころか、ここんとこまったく吸ってないでしょ!」
それには漏れなくブルマの怒号がついてきた。突っ込みという名の怒号が。
「まったく、声かけられるたびいちいち相手しなくていいから。さくっと無視できないの?」
ブルマの心情は、俺にはだいたいわかった(ルートビアでのことなんかを考えると、わからない方がおかしい)。だから、軽く笑って言っておいた。
「そう目くじら立てるなよ。買いやしないって。気分だよ、気分。ウィンドウショッピングみたいなもんさ」
「あら、珍しいこと言うじゃない。何あんた、こういうとこ好きなの?」
かなり意外そうな顔を、ブルマはした。俺はちょっと保険をかけつつ、それに答えた。
「嫌いじゃないな、こういう自由な雰囲気は」
『買い物が好き』という風にとられると、ちょっと面倒なことになるからな。ブルマの買い物に付き合ってる現状で、俺は充分事足りてるんだよ。
「自由?物は言いようね。単なる無法地帯でしょ」
「そういうのが好きなんだよ、男はな」
「そう言えば、あんた元盗賊だもんね〜」
「…ま、そういうことにしといてもいいさ」
ブルマの反応は、俺の妥協の範囲内だった。確かに、力で自分のものにするやり方は好きなんだ。ものにしたいものが物ではなく、強さという形なきものに変わっただけだ。
「ぼったくられるんじゃないわよ、盗賊さん」
その言葉を最後に、ブルマは怒号を引っ込めた。といっても、自分の買い物に熱中するでもなく、つかず離れずといった感じでブラブラし始めた。たいして買い物する気ないな、これは。俺と同じ、冷やかしだけだ。
どうやら今日は荷物持ちの必要はないらしい。それがわかった俺はさらに気楽になって、店先を物色した。刃物、装飾品、生活雑貨。質屋に屋台に路上売り。この雑然さ、どこか懐かしい匂いがする。俺のアジトの近くにあった街が、こんな感じだった。
結局、俺はぼったくられるどころか、何も買わなかった。宣言通り、雰囲気を楽しんだだけだ。言葉巧みに買わされるほどバカじゃない。こういうところにはな、盗品なんかの怪しげな品物も多いんだよ。俺は経験によって、それを知っているのだ。
で、気づくと、その辺をうろついていたはずのブルマが、一区画先にある路地の隙間を覗き込んでいた。自然、俺もブルマの後ろに立って、その場所を覗き込んだ。路地の奥まったところに、小さな黒いテントが立っていた。
「何だ、あのテント。あれも店なのか?」
「辻占いよ。都じゃとんと見なくなったけど、こういうところにはまだいるみたいね。あたし、ちょっと占ってもらおうかしら」
辻占い…
その瞬間、俺は嫌ーなことを思い出した。昔一度だけ、辻占いにみてもらったことがあるのだ。女の占い師に――西の都で。その時いたのは俺だけじゃなかったが、俺だけがその女の占い師の相手をしていたことに、ブルマの中ではなっていた。ブルマはすっかり忘れ去っているようだが、俺はよーく覚えていた。あれほど理不尽な喧嘩もなかったからだ。
「…占うって何を?」
「そうねえ…金運、仕事運、恋愛運、健康運…どれもこれも必要ないわね。しょうがないから、前世かな」
「前世?そんなもの知ってどうするんだ?」
「だって、金運なんて今さらでしょ?仕事は成功するに決まってるし。恋愛運なんて知ったってもうどうしようもないし、健康運だってたいして意味ないわよ。かといって、他に知りたいこともないしね。だから前世。前世なんか知ったって何のメリットもないけどデメリットもないから、ちょっとやってみるにはいいんじゃない」
…もうどうしようもないって、どういうことだ。
失礼なやつだな。その上、相変わらず自信家だ。
俺はちょっぴり眉を上げたが、ブルマはそれにも気がついていなかった。それどころか、鼻歌混じりにさっさとテントへ入っていってしまったので、俺は一つのことを強く心に誓いながら、その後を追った。
俺は絶対にみてもらわないぞ。男の占い師だったなら、また別だが……女だったら絶対に。
「あなたはきっと来ると思っていましたよ」
俺がテントを潜ると、一足先に対面していたブルマに向かって、占い師がそう言った。その声を聞いて、俺は思った。
やっぱり女か…
どうしてこういうところの占い師って、みんな女なんだろうな。そりゃ女の方がそれっぽいとは思うけど、だったらもっと明るいところでやればいいのに。こんな薄暗いテントの中で言葉少なに相手の顔を覗き込んだりするから、誤解されるんだ。
まあ、誤解するのなんてブルマくらいのもんだけどさ。
「前世…を占ってもらいたいんだけど」
そして、今はそのブルマこそが言い出しっぺだったので、俺は軽く息をついて場の推移を見守った。もう何も言うつもりはなかった。だいたい下手に会話してやきもちを焼かれたりするのもヤバい。ヤバいっていうか、恥ずかしい。
「わかりました。後は何もおっしゃらなくて結構です。こちらにおかけ下さい。これからあなたの守護霊の許しを得て、前世の霊魂を呼び出します」
「へぇ〜、本格的ね〜」
いきなりやる気だなぁ…
水晶玉占いじゃないんだな(なんとなくホッ)。…ブルマの守護霊ってなんだろう。戦国の世の女闘士かな。いや、力はないから闘士じゃないか。
いっそ前世の霊よりも守護霊の方に会ってみたいな、俺は。そしたら、少しお手柔らかにと頼むんだ。前世なんかに拘るより、その方がずっと建設的だよな。
「静かに。ゆっくりと目を閉じてください」
言いながら、占い師が香を焚き始めた。妙にツーンと鼻につく、刺激の強い匂いだ。うーん、それらしくなってきた。
信じる信じないは別として、俺は非常に興味を持って、おとなしく占い師の言葉に従うブルマを見ていた。片手間にやるようなことを言っていたわりには、ブルマはかなり乗り気に見える。ブルマって、科学者のくせしてこういうのには弱いんだよな。女の子らしくていいけど。
「手を膝の上に置いて。心の中を無にして…………そこに、いますね」
占い師がゆっくりそう言うと、ブルマの体がびくっと動いた。黙って目を開けると、どこかおどおどした感じで、目を泳がせ始めた。それで、俺はうっかり信じかけた。
「あなたの名前を言ってください」
「えっと…あの……」
なぜかなかなか答えないブルマのその理由を思って、ちょっとどきどきしたりもした。一方、占い師は実に余裕ある態度で、ブルマの返事を待っていた。
「その…あたしの名前は……ブル…」
それはもったいぶった態度で、ブルマは言葉を続けた。そう、『もったいぶった』。ここでそれが俺にはわかった。だって、俺はブルマの名前を知っていたから。
「…………ーナ王女よ」
でもまさか、その後にそう続けるとは思いもしなかった。


「あー、気まずかった!」
とっとと占い師の元を去り繁華街から一街区を外に出ると、ブルマが胸を撫で下ろしながら、わざとらしく息を吐いた。
「まったく、バレバレの嘘つきやがって」
気まずかったのはおまえじゃなくて、俺だ。そう思いながら俺が言うと、ブルマは物の見事に開き直った。
「だって、居た堪れなかったんだもの」
「だからって王女を名乗ることもないだろうに。あの占い師、びっくりしてたぞ」
「土壇場で思い出したのよね。王女のこと。名前も似てるし顔も似てるし、不自然じゃないなって。相手が市民アイドルの王女なら、根掘り葉掘り訊いてくることもないだろうし――」
根掘り葉掘り訊くどころか、フォローのしようもなかった。数分前のあの瞬間を思い出して、俺はやむなく苦笑した。それ以外にするべき顔がわからなかったのだ。
「市民アイドルって。おまえにかかると、王女も形無しだな。確かにその通りだったけどな」
「まったく何も起こってないわよとか、あの雰囲気で言えないでしょ〜」
言えよ。
おまえのいつもの図太さで。まったく、変なところで変な気を遣うんだからな。
通りすがりのもう二度と会わないであろう人間を立てるくらいなら、ずーっと一緒にいる俺を立ててくれないかな。こいつ、時々変に雰囲気に呑まれるよな。俺にはちっとも呑まれてくれないくせして。この一方美人め。
とは、言えない俺であった。だから黙って、やがて辿り着いた列車に乗り込んだ。
「まあ、時間は潰せたわね。期待外れだったけど。あれ、占いじゃなくて、誘導尋問よね。じゃ、そろそろディナーの準備しましょ」
「もうそんな時間か。ここって夕食早いよな。みんな一緒だからしかたないのかな」
「早い方がいいわよ。夜ゆっくりできるもの。ルームサービスはちゃんとあるんだし、問題ないでしょ」
「まあな」
そんな感じで、どことなくブルーナ王女の影が見える一日は終わった。
…わけじゃなかった。


今日一日すっかりラフに過ごしたから忘れていたが、夕食は正装なんだった。
正装ってちょっと気が張るよな。肩がこるとまでは言わないけど、惰性ではこなせない。おまけにここの夕食はまるで芸術性の固まりで、食べるのが大変なんだ。ブルマに初めて正式なコース料理を経験させられる以前の、敷居の高いイメージの料理がここにある。
でかいエビを四苦八苦して片付け、例によってデザートをご進呈して食事を終え、部屋に戻りシャワーを浴びると、ようやく本当に一日が終わった気分になれた。
「相変わらず何も見えないな…」
真っ暗な窓にブラインドを下ろすと、もうやることもなくなった。今日はすでに風呂を終えていたブルマが、軽く笑って俺の言葉を引き取った。
「この辺りは、街と街の間にはほとんど何もないのよ。あるのはワイン畑くらいのものね。ワインと観光で持ってるような地区よ」
「ふーん。つまり、街を点々としていく旅か」
それで俺は、もうすっかり寛いでベッドの上に足を投げ出しているブルマの傍らに座り込んだ。ま、のんびりしてるといえば、してるよな。単にすることがないだけだけど。わかっちゃいたけど、列車っていうのは半缶詰状態だ。やっぱり飛んでいく方が早くていいな。もし自分一人だったら、きっとそうしていただろう。
「そういうこと。次に行くのは、そのワイン畑の中にある街よ。ビアリ。ほら、このガイドブックに載ってるわ」
でも今は一人ではなかったのでそういうことを考えること自体をやめて、俺はブルマの持つガイドブックを覗き込んだ。そして、なんとなくブルマの肩を抱いた。ほとんど習性のようなものだ。ベッドに並んで座っている時の、いつもの習性。
「ここは本当に古い街でね、景色が半端なくいいのよ。ね」
「いかにも手つかずの自然って感じだなあ」
「でも、ド田舎ってわけでもないのよ。田舎は田舎なんだけど、不便な田舎じゃなくて、休暇を過ごせそうな田舎よ」
「ふーん。あ、ここにも城があるのか」
「ああ、これね。お城っていうより貴族の館みたいよね。昔の王が王子のために建てさせたんだって。今は改築されてホテルになってるわ。ツアーじゃなかったら、泊ってみたかったわねえ」
そのうちにブルマが、こちらに体を寄せてきた。さりげなく無造作に、俺の肩に凭れかかってきた。秋ならぬ異国での夜長。一日を終えた後の、気だるくもまったりとした時間。なかなか悪くない空気――と言いたいところだが、俺にはちょっとした懸念があった。
「なあ、ちょっとこっち狭いんだけど…」
懸念しながらも同じ台詞を言ってしまったことに気がついたのは、言ってしまった後だった。ブルマはというと、予想に反して、昨夜とは違う返事を寄こした。
「あ、ごめん」
そして自ら腰を浮かせた。そのまま素直にスペースを譲ってくれたので、俺はすっかり安心した。
「…今日のは偶然か」
そしてそれを、ブルマに見咎められた。
「何それ。どういう意味よ……いえ、いいわそれは。でも、普通そういうこと言う?」
「あ…ごめん」
「だいたい、そんな手何度も使うわけないでしょ。っていうか、今日はそういうつもりないから!」
「あ、そうなのか」
非常に直截的でわかりやすいその態度に、俺はまた安心した。ブルマのやつ、今夜は色気の欠片もないなぁ。昨夜のことさえ色褪せさせてくれる有様だ。『そんな手』って、何も本人自ら言うこともないだろうに。身も蓋もないとはこのことだ。…昨夜のブルマは一体なんだったんだろう。
俺は少し惜しいような気持ちにもなったが、それはあくまで昨夜のブルマに対しての感覚で、今のブルマに対してのものではなかった。そしてそれを、またブルマに見咎められた。
「…ちょっと。何よその、ほっとしたような顔は?」
「えっ?」
「何あんた、あたしとするの嫌なの?」
一足飛びに話は進んだ。…昨夜のスローペースを取り戻しているんだろうか。おまけに、ある意味非常にブルマらしいことに、大きな誤解をしてやがる。
「いや、まさか。ただ、その…………ちょっとここでは何だなー、と思って……その気がないならいいんだ。ははは」
敢えて笑って釈明をした俺に対し、ブルマは非常に厳しい目つきで言及してきた。
「はぁ?何その言い方?ここじゃ何だなって何よ?ここはれっきとした個室、あたしたちの部屋でしょ。ここでしなかったら、どこでするのよ?」
「いや、だって、その……ここ、壁薄いだろ…」
「普通よ。何、神経質ぶってんのよ」
「うーん…」
一体何でこんな会話をしているんだ。一瞬俺はそう思ったが、口には出さなかった。それを言えば、俺が責められるに決まっているからだ。
もう前の会話を振り返ったり、『親しき仲にも礼儀あり』とか思ってる場合ではない。現実的過ぎようが、興醒めだろうが、始まってしまえば終わらせるしかないのだ。そして、俺よりも脳みその皺が多いブルマを納得させるには、事実を言うしかないのだ。
「だって、その…おまえ声大きいからさぁ…」
「…な!何言ってんのよっ!…そういうこと今さらっ…」
そんなわけで俺は事実を言った。ブルマは俺の言葉を証明するように大声を上げかけて(俺が言ったのはこういう時の声ではないが)、次の瞬間顔を真っ赤にして拳を握った。
「昨夜のランチさんの騒ぎで気づいたんだけど、結構隣の部屋の声聞こえるよな。特に女の高い声が…」
「そ、それはランチさんはドア開けてたからでしょ!あたしの声は聞こえてないわよ!ちゃんと防音されてるし!この部屋高いんだから!」
「そうか?」
「そうよ!」
「…………」
「…………」
ならいいけど……
という単純な呟きを、俺は漏らすことができなかった。ブルマの雰囲気に呑まれて。無言の圧力…というか、奮い立たせているような気力…というか、曰く言い難いオーラに負けて。そんな雰囲気醸してるわりには、顔真っ赤だし。あれだけ声出してるから恥ずかしくないんだろうと思ってたんだが、やっぱり恥ずかしいのか…
そうだよな。ブルマだって女なんだもんな――特にこういうことに関しては立派な女だ。うん。
「あー…えーと、ごめん、俺…」
「謝ってもらったってしょうがないのよっ」
「…うん」
ブルマの言いたいことが俺にはわかった。触れられれば触れられるほど恥ずかしいってやつだろ?だけど、謝らないわけにはいかない。謝らなければ話が進まないんだから。
ブルマの場合、謝ってからが始まりなんだから。…今回はいつもとちょっと違うけど。いつもはここで何か代償を要求してきたり、改めて釘を刺したりするものなんだが。それが今日は未だに顔色が変わらない…依然として真っ赤なままだ。…ちょっとかわいいな。なんて思ってることがバレたら、ここ追い出されるかもしれないな…
「本当にごめん。俺が無神経だった」
俺はそれだけを言って、いつしか離してしまっていたブルマの肩を再び抱いた。できるだけさりげなく――この期に及んでさりげなくも何もないということはわかっていたが、敢えて空気を読まずに。他にもいろいろ台詞が頭に浮かんではいたが、それも言わなかった。『そんなに気にするな』とか『大きくないと思うよ』とか、そんなの今さらだ。むしろ話を蒸し返すだけだ。口を開くとどつぼにハマるのが見えてるんだから(っていうか、もうハマってるか?)、今はこうするのが一番いいんだ。
ということを、俺はこれまでのブルマとの付き合いから学んでいた。幾多の経験により、知っていた。
そう、典型的な喧嘩のパターンなんだよ。理由は実にくだらないってところまでな。決して慣れているわけではないのだが、悲しいかな宥め方は身についてしまっていた。
「…やめときなさいよ。恥ずかしいんでしょ?」
「そんなことないよ」
「嘘!」
「嘘じゃないって。さっきのは俺が悪かった」
「口では何とでも言えるわよ」
「そうだな」
「…………」
「…………」
長い物には巻かれろ。でも決して手は離すな。それがブルマに対する対処法だ。
なんて、いつもはそううまくはできないのだが。空気に逆らって抱きしめるというのはなかなか恥ずかしい上に、そもそもブルマの空気に逆らうのが大変だ。ブルマはなー…手も早いが、何より威圧感がすごいんだよ。一言で言うと、怖いんだよな。でも今は、そういうのがなかった。
それは、ブルマは怒ってるんじゃなくて、拗ねてるからだ。うーん、ちょっと違うかな?でもとにかく、顔はまだ赤かった。そしてそれが、怒りのせいじゃないことくらいは、俺にだってわかるのだ。
「…………で、俺はどうすればいい?」
長い長い沈黙の後で、俺は訊いてみた。自分から切り出すつもりが、今では完全に腕の中にいるブルマにはなさそうだったからだ。だから促した。すっかり覚悟を決めた上で。
ふて寝するもよし、仲よく寝るもよし。
少なくとも追い出されることはないんじゃないかなーと、俺は思い始めていた。
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