最初の男
あたしの心に入り込む、1つの黒い影。
それはヤムチャじゃない。


ヤムチャといると、ベジータのことを考える。
ベジータといると、ヤムチャのことを考える。
どうして、こんな風になっちゃったの?
いつから、こんな風になっちゃったの?

2人を好きになることなんて、ありえるの?
2人共好きだなんて、ありえるの?
どっちかが嘘なの?
どっちが嘘なの?

ヤムチャが好き。ベジータが好き。
ヤムチャには情がある。ベジータにはそれはない。
それがどういうことなのかわかる?
あたしがどちらを「愛して」いるのかわかる?


あたしはヤムチャの前にいた。
あたしの恋人の前に。
あたしの初めての恋人の前に。

あたしは涙を零していた。
それを止める力はあたしにはなかった。その意思はあたしにはなかった。
ヤムチャの前にいるあたしには。
…あいつ以外の前にいるあたしには。

ヤムチャはあたしの頬に優しく触れた。そっと涙を拭った。
あたしをその胸に伏せようとはしなかった。


あんた、わかったのね。
あたしの涙の意味を。
あたしが涙を零したその意味を。
なのに、いつものようにまた何も言わないのね。


あたしたちは長い長いキスをした。
2人でした中で、最も長いキスを。
2人でする、最も長いキスを。




あたしはヤムチャを忘れない。それはあんただけの特権よ。
ベジータにはない、あんただけの特権よ。
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