目線の女
何が何だかさっぱりわからないんだけど…

「どうしてあたしはダメなのよ。せっかく子ども料金で入れたのに。これじゃ意味ないじゃない!」
「子どもだからだろ」
瞬時にそう切り返した俺を、ブルマがじろりと睨みつけた。
ブルマが子どもになってから小一時間。一方的な宣言に従わされ遊園地へと連れてこられた俺は、ゲートを潜り抜けて以来、子どもの愚痴を延々と聞かされていた。いつものようにジェットコースター3連発をかまそうとしたところ、ブルマが身長制限に引っかかったためだ。
「しかたがないな。9歳以下はダメともなっていることだし」
「あたしは11歳よ!」
時折俺のシャツの裾を引っ張るこの少女を、てっきり1桁台の年齢だと思っていた俺は、この台詞に驚いた。
「おまえ、結構チビだったんだな」
「うるさいわね!」
怒声と共にブルマはむくれてみせたが、その姿にいつもの迫力はなかった。子どもだからだ。
7、8歳と見紛うくらいの子どもだから。だから俺もなんとなく、いつもと同じように会話を返してしまっていた。心の中は千々に乱れているにも関わらず。
一緒に遊園地に来ることなんて、もう二度とないと思っていた。こうして会話をすることも。思っていながら、ああ答えた。
こいつを騙すことなどできないと結論づけたからだ。心情的にではなく、能力的に。俺がこいつと密な関係である限りは永遠に、それは無理だろうと…所謂、二律背反ってやつだ。
納得できぬまま白旗を上げたはずの俺は、それを咎められることもなく、今は両手で小さな大人を掲げていた。
「わー、高い高い!」
半ば頭に縋りつきながら俺の肩から両足を投げ出して、ブルマは早くも不機嫌を捨てていた。
すっかり子どもになりきってしまっている。もはや大人の欠片もない。
…大人のブルマの、怒りの名残すらも。
本当にわからない。こいつ、どうして怒ってないんだ?
俺、何も言わなかったのに。言えなかったのに。どう考えても許されるわけはないんだが…
そういうこと、訊ける雰囲気ですらないんだよな。どういうんだろうな、これは。

「いてっ!」
髪引っ張るな!そう言いかけたところ、ブルマに機先を制された。
「じゃあ次、ウォータースライダー行って!」
まるでそれが操縦桿であると言わんばかりに、俺の束ねた後ろ髪を引っ張りながら、頭上でブルマが叫んだ。俺は思わず呟いた。
「あれは年齢制限が…」
「だから!11歳だって言ってるでしょ!」
…そうだった。どうも忘れてしまうな。
だけど、係員に信じてもらえるかなあ。俺が信じられないくらいなのに、果たして赤の他人が信じるだろうか。こんなガキくさい11歳、あまり見たことないよな。
こいつ、一体いつ成長したんだろうな。俺が会った時はすでに大人に見えたけど。5年くらいでそんなに変わるものなのだろうか。
ふと、先日会った悟空の姿を思い出した。ひょっとして、同じパターンなのかもな。
俺はタイミングがよかったってことか…
そう考えづけた時、俺は少しわかった気がした。ブルマがあそこまで怒った訳が。
ブルマとチチさんとの違いは、タイミングだけだもんな。悟空と俺との違いも、またそうだ。少しタイミングがズレていれば、まったく別の組み合わせになっていたかもしれないわけだ。
俺とチチさんの組み合わせは今ひとつ想像できないが、悟空とブルマの組み合わせは、割合簡単に想像がつく。きっと、今のままだろう。ある意味、最強の組み合わせだ。
自分の想像に、俺は嫉妬したりはしなかった。ただこう思った。
…因果だなあ。本当に因果だ…


ウォータースライダーはブルマを受け入れた。そして、ブルマもそれを受け入れた。
「もう一回乗るわよ!」
大人の時は『物足りない』とよく言っていたウォータースライダーだが、子どもの体だと結構な迫力らしい。そう言って、意気揚々と列の最後に並びつけた。
こいつはこういう絶叫系が本当に好きだ。そして同じ(?)絶叫系でも、お化け屋敷は嫌いだ。強いのか弱いのかわからないよな。
「ねえ、ソフトクリーム食べたい」
「またか」
「子どもは動くから喉が渇くの!」
…ずっと俺の肩に乗ってたくせに。
「すぐ戻ってくるから。あんたはそのまま並んでてね!」
俺が突っ込みを入れる間もなく、ブルマはショップへと駆けて行った。子どもの特権だよな。大人がこれをやったら、ただの割り込みだ。
少々微妙な気持ちになりながら、乗り順とブルマを待っていると、ふいに横から声をかけられた。
「あっら〜。ヤムチャじゃない!?」
正直、声も姿も記憶の中にはなかったが、その口調には覚えがあった。
ハイスクール時代の同級生。ブルマ言うところの俺の元取り巻き(実際には取り巻かせたことなど一度もない。言い切れる)。すでにブルマと2戦交えている女性。言わば犬猿の仲だ。
これは大変マズイことになった。彼女とブルマは顔を合わせただけで開戦するのだ。やや意外であることに、ブルマではなく彼女の方が先制する。とあれば、俺には止める術もない。
「前もここで会ったわよね。遊園地、好きなの?」
「うん、まあ…」
否定しようのない質問に、俺は完全に捕まってしまった。彼女はぐるりと周囲を見回すと、目に笑みを浮かべて言った。
「今日はブルマはいないのね」
思わず言葉に詰まった。
これは何と答えればいいのだろう。確か前も同じことに悩んだような気がするが、今日はだいぶん気分が異なる。…まあ、いるにはいるんだよな。でも、バラすのはやっぱりマズイだろうな。
「一人?なら一緒に…」
ほぼ読めていたこの台詞は、子どもの声に掻き消された。
「ちょっと!ヤムチャ!」
言いながら俺のシャツの端を掴んだ、片手にいちごのソフトクリームを持った小さな女…
一体他人にどう説明すればいいのか。今最も話題にしたくない人物の登場だ。
「あら」
彼女は視線をちらと落とすと、目を細めて子どものブルマを見た。
「妹さん…じゃないわよね。姪御さんかしら?」
なるほど、その手があったか。
「そ…」
即決で彼女の言に乗ることにした俺の手を、ブルマが引っ張った。
「姪じゃないわ。彼女よ!」
「彼女?」
背伸びして俺の腕に巻きつこうとするブルマを、彼女は不審そうな目で見下ろした。数拍の間が開いて、再び会話が始まった。
「そうなの。かわいいわねえ。…ところでヤムチャ、その頬の傷はどうしたの?」
ブルマの発言を、彼女は無視することに決めたようだ。まあ、そうだろうな。それが常人の感覚…ロリコンと思われなくてよかった。
「いつ頃やられたの?酷い女ね」
「は?」
反射的に頓狂な声を出してしまってから、俺は気づいた。彼女の言外の意味に。
女って怖いな。そういう思考をするのか。いや…
「違うよ、ブルマのせいじゃない。俺の不注意なんだ。あいつは酷くないよ」
女が、じゃないな。怖いのは…酷いのは彼女だ。
だって、ブルマはそんな思考はしない。行為はむろんのことな。それくらいわかるさ。確かにこいつは乱暴だけど…
その時、シャツの裾が引っ張られた。乱暴に。
「ちょっと、ヤムチャ!こっちきなさい!」
フォローしたはずの人物が下から俺を睨みつけていた。

裾と袖を同時に引っ張られて、俺は広場へと連れ去られた。
まるっきり、子どもに駄々を捏ねられている図だ。『こっちへ行くの!』攻撃だ。
「おい、何だよ」
「それはこっちの台詞よ。何考えてるのよ、あんたは!」
そこそこ人気のないところまで来てようやくブルマは手を離し、俺に怒声を浴びせ始めた。
考えてみれば、こんな風に子どもに怒られるのって初めてじゃないかな。それにしては新鮮味がないけど。
「どうしてあんなこと言うのよ!どうしてあたしを庇わないのよ!」
「何言ってんだ、庇っただ…」
「どこがよ!!」
ブルマの怒声が俺の返事を掻き消した。いつもと同じように。
少しだけ違うのは、相変わらず迫力がないということだ。やはり目線が下だからな。
ブルマは数瞬目を瞑って何やら考え込み、再び怒気を発し出した。
「あんた、何であたしが彼女だって言わなかったのよ」
「は?」
その台詞は、まったく俺の虚を突いた。
「何でって…おまえ子どもだろ」
悟空やクリリンが見ればブルマだとわかるかもしれないが(こいつの怪しげな発明のことも知っているしな)、他の人間には無理だろ。そもそも、彼女にそこまで説明する義理などない。
だいいち、説明したって信じるかどうか。俺がロリコンと思われるのがオチ…いや、それもないかもな。俺、そういう風貌じゃないし。それにそういう人種が好むのは、こういう女の子じゃないような気がする。もっと素直で、いかにもな可愛らしさを漂わせている子なんじゃないのかな。
すましていればこいつも悪くないんだけどな。口を開いた途端に、正体がバレるだろうからな…
俺の心を読んだかのように、ブルマが口を閉じた。一瞬目も閉じた後、妙にすっきりとした顔をして、軽く握った左手を自分の目の高さに掲げてみせた。
「ヤムチャ、これ見て」
「…何だ?」
ブルマのこの手の素振りに、俺は少々トラウマを持っていた。マシュマロとか、飴とか。とりあえず口は閉じていようと固く決めた。
だが、この俺の警戒心は空振りした。というより、的外れだった。地面に片膝をつきブルマと目線を合わせた途端、それが飛んできたのだ。
大人ブルマの十八番。――右の平手打ち。さらに…
「バーカ!!」
止めに飛び出すいつもの台詞。
言うが早いか駆け出すブルマを、俺は呆然と見送った。まったくわけがわからなかった。
「何だあ…」
呟きながら、さして痛くもない左頬に手を当てた。


「おーい、ブルマー」
途方に暮れながらも、俺はブルマを探した。そしてさらに途方に暮れた。
人のごったがえす休日の遊園地で、大人目線で一人の子どもを探すというのは、想像以上に難しい。ブルマが大人の姿なら、心配するのはこれからの自分だけでいいんだけど。あの姿じゃなあ…
しかし、あいつは一体何を怒っていたんだ?
彼女として紹介しなかったこと?まさかな、冗談だろ。子どもの姿で紹介されることに、一体どんなメリットがあると…
あれ?
ふいに俺は気づいた。自分でも忘れかけていた疑問。その答えをいつの間にか与えられていたことに。
あいつ、俺の『彼女』だったのか…
なんとなく空気に流されてうやむやになっていたけど。そうか、俺許されていたのか…
先の様子を思い出した。ブルマが彼女に言い切った時の一連の流れを。
聞き流す俺も俺だよな。だって、あんまり自然だったからさ。
…あいつ、さりげなさのエキスパートだな。意地っ張りとさりげなさって案外両立するんだなあ…
俺は少し余裕が出てきた。園内の様子が見えてきた。
確かに、この広大な園内で子どもを一人探すと思えば、不可能な気はするが…
逆に考えれば、あいつは今子どもなんだから。それを利用すべきだよな。


「はは、怒ってる怒ってる」
予想通りのブルマの表情を遠目に見て、俺は入り口の影で思わず笑ってしまった。
ブルマと付き合ってると、時々本気で自分がバカに思えてしまうけど。本来俺は、策を弄するタイプなんだよ、うん。
あいつも賢そうに見えて、案外間抜けだしな。…それくらいがちょうどいいよな。
母親に抱きつく子ども、愛情から子どもを叱る父親――そこかしこで起こる小さなドラマを横目に見ながら、迷子センターを奥へと進んでいくと、俺の保護すべき人物が仏頂面で現れた。
「何てことすんのよ、あんた!どうして、あたしが迷子なのよ!!」
「子どもだからだろ」
瞬時に切り返してやった。間髪おかず、ブルマが俺を睨みつけた。
…おおこわ。
そう呟かなくて済むところが、子どものブルマのいいところだ。
こいつ、いつから怖くなったんだろうな。やっぱり成長した時かな。…俺はタイミング悪かったってことか。
「ほら、行くぞ」
俺はブルマの手は取らず、その身を肩の上に乗せた。
もう逃げられないように。


迷子センターから一歩を踏み出して以来、俺は子どもの愚痴を延々と聞かされていた。
「あんた、いつから兄になったのよ!」
「そんなの、嘘も方便だろ」
「どこをどうしたら、あたしとあんたが兄妹に見えるっつーのよ!」
「いや、見えてよかったよ」
本当によかったよ。不審者と思われたらどうしようかと思った。
こいつ、どう贔屓目に見ても8歳くらいにしか見えないし。8歳と23歳の兄妹…無理ありすぎだよな。
11歳だとしても、やっぱりまだ無理あるし。…これは俺が若く見えたってことかな。童顔に感謝すべきか…
俺が大変微妙な心境に陥っていると、さっきまではそれに歓声を上げていたはずの人物が、一転して不平を言い出した。
「ねえ、もう下ろしてよ。自分で歩くから」
もう肩車に飽きたのか。本当に飽きっぽいんだからな。いや…
「そんなこと言って、また逃げる気だろ」
「そんなことしないったら」
素直に従う気に、俺はなれなかった。当然だ。どう見てもこいつまだ怒ってるし。そう何度も、迷子のアナウンスをしてもらうわけにもいかない。さっきの彼女もまだいるだろうし、他にも知人がいないとも限らない。こいつと同名の人間は、都には数人しかいないはずだからな。
「下ろしてったらー!」
「痛い、痛いって!!」
足をばたつかせ髪を引っ張る様に閉口しながら俺はブルマを肩から外し、しかしその体は宙に浮かせたまま、せめてもの提案をしてみた。
「じゃあ抱っこ…」
「変わらないっつーの!」
何がだよ?
そう訊ねようとした矢先、ブルマが顔を顰めた。
「痛っ」
そう叫ぶと、宙にぶら下がったままのその姿勢で、足を折り曲げその先を掴んだ。
「どうした?」
「足が痛…靴脱がせて」
「靴?」
靴擦れか?それにしてはまたずいぶん大げさな…
靴下まで脱がせても、その痕跡は見当たらなかった。再び靴下と靴を履かせようとした俺に、ブルマは震える声で言った。
「ヤバイ。戻ってきてる」
「何が?」
訊きながら、俺は気づいた。ブルマの顔色が酷く悪いことに。もとより白い肌が、さらに白くなっている。
「体。戻ってきてる…」
「…今?ここでか!?」
ブルマは口を噤んだ。俺のシャツの胸元を固く掴んだ。全身が小刻みに震えている。異変が起きているのは明らかだ。理由もまた明らかではあるが、それは俺たち以外には知りえない。
「ちょっと待て。まだ戻るなよ!!」
いくらなんでも、往来で戻るのはマズすぎる。
いっそ飛んでしまいたい気持ちを抑えながら、ブルマを抱え俺は走った。


広場の隅、木々の陰、茂みに囲まれるその場所を見つけた時、ブルマの手足はほとんど伸びきっていた。
時刻は夕刻、園の外縁部でパレードが始まろうという時間。そのため広場に入ってからは、ほとんど人に会わずに済んだ。不幸中の幸いだ。
芝生にその身を置いてからも、ブルマは俺のシャツから手を離そうとはせず、しばらく荒い息を吐いていた。やがて手を離すと共に、事の終わりを告げるその台詞を呟いた。
「ああ、痛かった…」
「大丈夫か?」
「うん、もう平気」
言いながらブルマはキャミソールの裾を引いてみせたが、それはほとんど意味をなしていなかった。太腿がほとんど露になっている。立ったら見えるんじゃないかな。もとより胸元は露出しているし、…この格好で歩き回ったら、たぶん軽犯罪法で捕まるな。
「もう少し暗くなったら、抱いて飛んでいってやるよ」
それしかないよな。しかし、俺がいなかったらどうしてたんだ、こいつ。保護するのがもう少し遅かったら…あまり考えたくないな。
ふと、人の近づく気配を感じた。茂みの向こう、歩道の辺りに。そちらを背にして、すかさずブルマを腕の中に抱え込んだ。
向こうからは見えないとは思うけど、念の為隠しておいた方がいい。というか、俺が誤解されたりしないだろうな…
騒々しい幾人かの声と足音が聞こえ遠ざかって、俺が腕を緩めた時、ふいにブルマがしなだれかかってきた。それを避ける理由は俺にはなかった。
残照に輝く髪。仄かに香るフローラル。柔らかな肌…
瞬間、そのことに気づいて、俺はブルマから身を離した。
おまえ…ノーブラかよ!!
思わず口に出して咎めてしまった。
「おまえ、下着くらいつけてこいよ…11歳だったんだろ?」
「だって…」
「だって、じゃないだろ」
年相応に見られたいなら、それなりのことをしろ。一番自分を子ども扱いしてたのは自分じゃないか。
その言葉は呑み込んだ。自分の保護者気分に気がついたからだ。もう、こいつの兄になる気はなかった。
「あぁ…」
再びブルマがしなだれかかってきた。僅かな呻きと共に。
「どうした?」
後遺症か?
その顔色を見ようと肩に手をかけた時、ブルマがぽつりと呟いた。
「…お腹空いた」
思わず言葉を失った俺に追い討ちをかけるように、焦点の定まらない会話が続いた。
「子どものあたし、かわいかった?」
俺は頭を掻いた。微かな溜息と共に、その言葉が出た。
「あんまり変わんねえな」
全然違和感なかったよ。子どもの姿になっても。口調以外は、まったく大人を感じさせなかった。…いや、そもそも子どもと大人とで認識を変えたことが間違っていたのかもな。

子どもは大人になる前の、言わば脱皮する前の姿…
多分に漏れず俺の中にもあったその一般論は、今や完全に瓦解していた。
まずは、悟空だ。あの成長ぶりには驚いたが、あいつは中身は変わっちゃいない。以前のあいつは体こそ小さかったが、中身が小さく見えたことなどなかった。今も昔も変わらず大きいままだ。
まあ、女の子は…男より身体的変化が顕著だから、感じ方は変わるけど。それは否定しないけどな。

少し体を離して、ブルマの顔を見た。大きな青い瞳、僅かに整えられた眉、白い肌に浮かび上がる艶やかな唇…
半日ぶりに見た大人のブルマは、俺には以前とまったく同じに見えた。
半年前と同じ。出会った時から変わらない。永遠の子ども。

俺は夢から覚めた。でも、いいさ。
夢なんて、現状に満足していない人間が見るものだ。




陽が落ちた。辺りに人がいないことを確かめて、俺は腰を上げた。
「さて、帰るか」
「当然、お姫様抱っこよね!」
嬉々として叫ばれたブルマの言葉を、俺は退けなかった。…だって、今にも尻が出そうな服装で、他に選択肢があるか?
俺がその体を持ち上げると、ブルマは腕を俺の首に絡ませ、無邪気に体を寄せてきた。
「ひさしぶりね。何年ぶりかしら」
「あまりくっつくなよ」
「何でよ?」
ノーブラだからだよ!!
こいつ、わかってるのかなあ。…半年ぶりなんだぞ。そりゃ俺だって、さっきまではそれどころじゃなかったけどさ。

子どもが純粋だなんて、嘘だよな。本当に厄介なシロモノだよ。
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