聖楽の女
俺はカレンダーを持っていないわけではない。さすがに、そこまで超越してはいない。
でも、だからといって、カレンダーを毎日見ているわけでもない。
ただ、なんとなく帰ってきた。そうしたら、その日が今日だった。
それだけだ。

…実を言うと、帰ってくる途中で気がついた。今日がクリスマスだということに。
気がつかないわけがない。都の様子を見れば一目瞭然だ。いつもの倍はあろうかという街の灯り。上空からでもわかるほど派手に飾り立てられている街路樹。氾濫するクリスマスカラー。今日の日付をしつこく強調している巨大テレビスクリーン。空の高みにジュエリーショップのアドバルーン。
『MERRY CHRISTMAS!――I want to see his face with which the lover is pleased. ――(恋人の喜ぶ顔が見たい)』
間近に見たそのアドバルーンの長文部分をうっかり全部読んでしまって、俺は思わず声を上げた。
「あっちゃ〜…」
我ながら非常に情けないと思える声を。絶対誰にも聞かれていないことだけが救いだった。
プレゼントなんて、用意してないなあ。だいたい、クリスマスだということに気がついたのが今さっきだ。気づいた時には、帰ってきてよかった、と思ったものだが。これはひょっとして、帰らない方がいいかもな。…でも、こないだ言われたばかりなんだよな。『肝心な時にいつもいない』――あれ、何の時だったかな。ブルマって、イベント好きだからなあ。特にクリスマスみたいな、いかにもなイベントはきっとさらに。
…うーん。
俺は少しばかり時間をかけて、怒られる心構えを作った。一応考える振りをしてはみたが、踵を返すつもりは最初からなかった。それでは本末転倒だ。そのくらいはわかっている。
きっとブルマは怒るだろう。思いっきりか、なじる程度かはわからないが、絶対に怒る。口では必ず怒るだろうことはもう確実だ。でも、俺にはわかっていた。
ブルマは『プレゼント』が欲しいわけじゃない。それくらいは、わかっていた。


冬の日差しの差し込むC.Cのリビングで、久しぶりにプーアルの淹れてくれたコーヒーを飲みながら、俺はそこにいたウーロンに、ブルマの近況を訊ねてみた。
「今って、どんなことやってるんだ?何かとりかかってるメカとかあるのか?」
「おれに訊くな、おれに。わかるわけねえだろ。っていうかよヤムチャ、おまえ聞いてわかんのかよ」
「いや、わからん。一応訊いてみただけだ」
わからなくても訊いてみる。それがマナーだと、俺は思っている。それなら本人に訊けと思うかもしれないが、ブルマから聞かされると理解しなきゃいけないからな。それはちょっとハードル高いんだよな…
「とにかく早い時間に帰ってきてくれてよかったぜ。これで今年は当たられずに済む。おまえいっつもワンテンポズレてるんだからよ。終わってから帰ってきても遅いんだっつの」
「一体、いつの何の話だ?」
「去年のクリスマスだよ。おまえ夜中近くになって、ようやく帰ってきたじゃねえか。あいつ機嫌悪くて大変だったんだからな」
「そうだったかな」
「そうだよ。ったく、無責任だよな、おまえは。おれははっきり覚えてるぞ。ブルマのやつ、おれのケーキのイチゴをまるごと…」
そうか。俺、去年も帰ってきてたのか。そういえばケンカしたような気もするな。そうか…
だから何だと言われても困るが、なんとなく俺はしみじみとした気分になった。どうしてかと訊かれても、やっぱり困るが。
ふと、それまでキッチンにいたプーアルが、俺の隣にやってきた。身を縮こまらせてすり寄ってくるその様と、ドアの向こうから聞こえてくる荒々しい足音に俺が苦笑していると、ウーロンが嫌味たらしく呟いた。
「おっ。おーおー、帰ってきたな。今年も荒っぽいおかえりで」
今年『も』。その間接的な俺への嫌味にさらに苦笑を深めたその時、リビングのドアが開いた。
「よ。おかえり」
苦笑を押し隠して言った俺の言葉に、ブルマは答えなかった。まるで鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、ただドアの前につっ立っていた。古臭い表現だと思うが、本当にそんな感じだった。そして数秒間の沈黙の後で、こんなことを言った。
「あんた、どうしてここにいるのよ」
ひどいなあ。ひど過ぎるよな。それが久しぶりに帰ってきた恋人に言う台詞か?
「なんだよ。いちゃいけないのか?」
俺はことさらにむくれて見せた。一応の仕返しとして。実際のところは、怒りどころか不快感すら湧かなかった。俺も勝手に出てって勝手に帰ってきてるんだ。多少は言われてもしかたがない。
でもだからといって、言われっぱなしになる気はない。まあ、そういうことだ。
「だって何にも…」
「おまえ、素直に喜べよ。かわいくないやつだな」
そういう俺の繊細な気持ちを軽々と踏み越えて、ウーロンが言い放った。…そこまで言う気にはなれないんだよな、俺は。ウーロンのやつ、豪胆だよなあ…
「うるさいわね!ちゃんと喜んでるわよ!」
「そんなら早いとこどっか行っちまえ。おまえが去年食ったぶんのイチゴは、おれが食っといてやるからよ」
とてもそうとは思えない剣幕で、ブルマが喜びを口にした。とてもそうだとは思えない態度で、ウーロンがデートを促した。水と油というやつは、実はひどく似ているんじゃないだろうか。この2人を見ていると、つくづくそう思えてくる。…それにしてもイチゴか。ケーキのイチゴを取り合ってケンカ…ずいぶんかわいいケンカだな。俺とするケンカとは大違いだ。
この時俺は、ウーロンの俺たちに対する視線の源を見たような気がした。それをケンカだとするならば、確かに俺たちはケンカばかりしているように見えるだろう。
「だってさ。どうする?」
なんとはなしにしみじみとしてきた気分を打ち切って、俺はブルマに言ってみた。仲裁と、確認の意図を込めて。ブルマは途端にウーロンとの会話を放り出して、満面の笑顔で叫んだ。
「行く行く!用意してくるからちょっと待ってて!」
そして文字通りリビングを飛び出していった。それを見て、俺はウーロンの視線そのものを非難したい気持ちになった。
全然そんなことないよな。充分かわいいじゃないか。なあ?




だいたいわかってはいるが、訊いてみる。それがブルマとの会話のポイントだと、俺は思っている。
「で、どこに行くんだ?」
「ショッピング!それからいつもの遊園地!!」
ブルマからの返答は、ほとんど俺が想像していた通りのものだった。より正確に言うならば、想像など入る余地もなく、ほとんどいつもと同じ反応だ。でも俺は肩透かしを食らったような気はしなかったし、『またか』とも思わなかった。…後者に関しては時々思うことがあるが、この時は思わなかった。慣れとは違う、安心感。これを何と言えばいいのだろう。
ただ少しだけいつもと違ったのは、答えるその顔が何だか異常に嬉しそうだったということだ。まあこれは、嬉しい誤算、というやつだな。
大音量で流れるクリスマスソング。サンタクロースに扮したビラ配り。派手さを競うように点滅し続けるイルミネーション。地上から見るクリスマスの都の風景は、空から見るそれよりも、だいぶん商業的なものだった。これまで考えたこともなかったが、このイルミネーションってやつ、歩きながら見るものじゃないな。これは絶対、空の上から見るべきものだ。
ふと頭上の空に、例のアドバルーンが見えた。その下にあるジュエリーショップには、プレゼントを買い求めるカップルの山。嬉しそうにそれぞれのアクセサリーを選んでいる女たちと、それを見つめる男たち。その現実も手伝って、実にさりげなくブルマが水を向けてくるまで、俺はちっとも気がつかなかった。
「どうしよっかな〜。フォーマルって感じじゃないし、カジュアルもちょっと違うし。たまにはタイ締めてみる?」
「…あ、俺のか」
こういう時のショッピングというやつは、女のものを見るものだとなんとなく思っていた。ブルマが俺の服を見立てること自体は、さほど珍しいことではない。むしろよくあることだ。たいていはバーゲンの時とか、俺が修行から帰ってきた時とか…って、そうか、そこから始めるのか。これは先が長そうだな。まさかヘアサロンにまで連れていかれたりはしないだろうな?…
「そんなに変か?この服装」
それなりに着飾ったつもりだったのだが。というか、今着てる服、ブルマが選んだものなんだが。
俺は少し身構えつつ、不本意を顔に出してみた。嫌味を言うつもりはないが、こいつ時々、自分で選んだ服をそうと忘れてけなしたりするからなあ。同じ服でも日によって評価が違ったりするし。要するに、その時々の気分なんだよな。
「ん〜、悪くはないけど。あんたは磨けば磨くほど光る珠なんだから。ねっ!」
あっけらかんと放たれたその褒め言葉は、俺の心に感銘を与えはしなかった。すでに幾度となく聞かされ続けてきた言葉だったからだ。そして、俺はそれにも関わらず、返す言葉を未だに見つけられずにいた。正直言って、わざわざ否定するほどの心境にはなれない。かといって、大っぴらに賛同するのもな。それで、俺は結局いつもこう言ってしまうのだ。
「…ま、いいけど」
するとブルマがにっこり笑って抱きついてくる。今日は俺が言うより早く抱きついてきていたが、表情は同じだった。そして俺は、それを悪くないなと思ってしまう。
ブルマは意外と乗せ上手だと俺は思う。それとも俺が乗せられやすいだけなのだろうか。

だからといって、どこまでも乗せられるというわけにはいかない。
ショップを選ぶのは任せる。何回試着させられようとも我慢しよう。それでもやはり、譲れないラインというものはある。
「えー、なんで?これのどこがダメなのよ?いいデザインなのに」
ショップのフィッティングルームから出て2枚目のシャツを手放すと、途端にブルマの顔から笑みが消えた。ある意味ではやりやすくある意味ではやりにくく思いながら、俺は事実を告げた。
「デザインがよくても生地がな。いくらなんでも伸びなさ過ぎだ。これでは腰が切れん」
「何よ、腰が切れるって」
「腰を切るというのはな、腰を起点とせずに体を…」
なんとはなしに始めてしまった説明を、俺はすぐにやめた。ブルマにはわからないだろうと思ったからではない。ブルマが全然話を聞いていないということがわかったからだ。
「とにかく、せめて腰が回らないとな」
すでに店員の方へと向きかけているブルマの気を少しだけ取り戻すことに成功して、俺は3枚目のシャツを受け取った。
まったく。女の店員にはそっぽを向くくせに、男の店員だとすぐに話しかけようとするんだから。まあ、俺は何も言わないけどな。大人だから。
ほとんど消去法による結果として、シャツとそれに合うボトムを選んだ。やや固い襟元を緩めていると、早くも次の指令が飛んできた。
「タイはどうする?」
「これにタイは窮屈だな」
「じゃ、ジャケットね」
自分の意見がすんなりと受け入れられたことに、俺は少し驚いた。だが次の瞬間、開いたドアの隙間からジャケットが3点飛び込んできたので、すぐに状況を理解した。
また売り込まれたな。こいつ、セールストークに弱いよなあ。特に男からの。
「これ、この茶色のやつがいいな」
「えー、そお?あたしは白いのが一番いいと思うんだけど」
深く考えることなしに俺が自分の意向を告げると、フィッティングルームの外でブルマもまた同じことをした。俺は苦笑しつつその声を聞いていた。たぶんそうなんだろうと思ったよ。さっきの店員が似たようなものを着てたしな。
俺は別に、嫉妬しているわけではない(と思う)。ブルマの好みを気にしているわけでもない。16の頃から一緒にいるんだ。自然とわかりもするというものだ。
…うーん、どうするかな。
俺は一時ジャケットから目を離し、少しだけ考え込んだ。
いつもならこういう時は、ジャンケンか店員の言に従うものだが。でも今日はいつもとは違うからな。今日はクリスマス。たぶんブルマにとっては、誕生日の次かその次くらいに重要な日だ。それっぽいことは何も言ってこないが、顔を見ていればわかる。すごく嬉しそうだからな。そして世の中的には、家族や恋人を喜ばせる日。なのに俺は、ブルマに何もしていない。むしろしてもらっているところだ。
そこまで考えた時点で結論は出ていた。きっと誰でもそうするだろう。
「ブルマ、俺これに…」
茶のジャケットを手に、白いジャケットを羽織りながらフィッティングルームのドアを開けた。途端に指令が飛んできた。
「あんたは引っ込んでて!!」
なんだか、さっぱりわけのわからない指令が。…俺、何かしたか?
絶対にそんなことあるはずがないにも関わらず(だって俺はずっとフィッティングルームにいたんだからな)、俺はそう考えた。そして、やっぱりそんなことはなかったらしい証拠に、こんな会話が聞こえてきた。
「お客様。そちらのブラウンのジャケットですけれど、揃いのレディスタイプもありますのよ。お客様は身長もおありですから、きっとお似合いに…」
「それ貰うわ!!」
相手が言い終える間もなく、ブルマは叫んでいた。次の瞬間俺を振り向いたかと思うと、あっという間に俺の手からジャケットを引っ手繰っていった。あまりの剣幕に思わず呆然としていると、付け足すように最後の指令が飛んできた。
「茶色い方に決まりね!!」
ブルマも案外、乗せられやすいな。少なくとも、俺以上だ。


浮き立つ街のざわめきの中で、自らが最も浮いているような感覚を、俺は味わっていた。
「わーい、お揃い!」
そこへあっけらかんとしたブルマの歓声が飛んできて、俺はさらに浮足立った。
…こいつ、こういうやつだったのか。
同じ服を着て大勢の中を一緒に歩く。しかも、誤魔化しようのないほどくっついて。そういうこと、いかにもしそうでしないタイプ、そう俺は踏んでいたのだが。というより、今まではそうだった。結果的に似たような服装で出歩いたことなら何度もあるが(それほど趣味がかけ離れていない上に、俺の服にはブルマの嗜好が入っているからな)、ここまであからさまなのは初めてだ。
「ちょっと子どもっぽくないか?俺たちもう2×歳だし…」
さしてそう思っているわけではないにも関わらず、俺はそう口走っていた。どうしてなのかはわからない。いや…
これはたぶん…………照れってやつだ。
「いいの!クリスマスだもん!」
ブルマは俺の言葉をものともせず、笑ってそう言い切った。その邪気のない笑顔を見ながら、俺は相反する二つのことを思った。
全然理由になっていない。――それと――……やっぱり気分だったか。
そして、それら二つをひっくるめて、こう思った。
悪くないな、こういうの。うん、全然悪くない。
今では俺の心も浮き立ってきていた。俺の腕を取りながらちょろちょろとそこいらを飛び回っているブルマほどではないにしても。そして、それはどうやら顔に出てしまっていたらしい。
「ちょっと、何笑ってんのよ?」
「いや…」
軽く眉を顰めてブルマが詰め寄ってきた時、俺は反射的に口篭った。だがその習性が、そのまま続くことはなかった。
なぜだろう。なぜか俺は唐突に、少しばかりリップサービスしてみようという気になった。
「かわいいと思ってさ」
我ながらすっぱり言えたと思う。ブルマに何度か指南された『ちゃんと目を見て言え』というやつも実行した。だがブルマの反応は、俺の想像とはまるで違っていた。正確に言うならば、期待したどの事実とも違っていた。
「何よそれ!あんた、あたしをバカにしてんの!?」
一体、どこをどう読めばそう解釈できるのか。いっそ訊いてやりたいぐらいのことを、全力で叫び立ててきた。本当に、どうしてそうなるんだ。だいたい、俺がブルマをバカにしたことなんて、今まで一度だってないぞ。そんなこと怖ろしくてできるわけがない。いや、今はそういうことを言っている時じゃないか。
逸れかけた気を戻して、俺は再びブルマの心に訴えかけてみた。
「どうして怒るんだよ?せっかく褒めてやったのに」
ちゃんと本当のことだぞ。それもこんな真っ昼間っから、思い切って言ったのに。
ブルマはこの言葉も突っぱねた。わざとらしく両手で耳を塞いであろうことか目まで瞑って、とどめの一言を投げつけた。
「うるっさい!!」
うるさいって、おまえなあ。
そんなこと言われたら、何も言えなくなるじゃないか。いくら照れてるといったって、その反応はあまりにかわいくないぞ。本当にこいつって、素の時は頑なだよなあ…
やっぱり気分か。俺はもう諦めて、口を噤むことにした。その時、ブルマが再び叫び立てた。
「あっ!わかった!ヤムチャあんた、プレゼントそれで誤魔化そうとしてるんでしょ!」
ぎくり。
まったく全然露ほどもそんなこと考えていなかったにも関わらず、俺は体を引いてしまった。…あれだな。やっぱり後ろめたいというか。良心がとがめるというか…それにしても、ブルマのやつ鋭いな。プレゼントの話なんか、これっぽっちもしてなかったのに。『クリスマス』の言葉が出たのだって、今さっきじゃないか。
心の奥底から、俺はかねてより用意していた、怒られる心構えを引っ張り出した。そのまま様子を窺っていると、ブルマは突然けろりとした態度になって、いともあっさりと言った。
「いいわよ別に。プレゼント貰おうなんて思ってないから」
「え…そうなのか?」
俺は思わず訊き返してしまった。やぶへびになるかもしれないといつもなら思うところだが、この時はそうではなかった。なんていうかさ。怒らないでいてくれるのは、すごくありがたいんだけど。そんなにあっさり引かれると、さすがにちょっと淋しいんだが…
すると、そういう俺の繊細且つ自分勝手な気持ちをまったく無視して、ブルマが言い放った。
「そうよ。プレゼントなんかどうだっていいの。それよりも、クリスマスを一緒に過ごすってことが大事なんだから。あんたはただあたしと一緒にいさえすればそれでいいのよ!」
それがあまりに堂々とした態度だったので、俺の心は感銘を受ける段階を飛び越えてしまった。
ブルマのやつ、よくそんなこっ恥ずかしいことをでかい声で言えるな。『かわいい』の一言で取り乱していたやつとは思えん…
…いや、気づいてないのか。
そうだな、気づいてないんだな。気づいてたらこんなこと絶対に言わないだろうからな。こいつ、俺には言わせようとするくせに、自分では全然言おうとしないんだから。無意識の本音ってやつか…
その証拠にブルマは何事もなかったかのような顔色で、至極自然に俺の腕を取った。
「さっ。そろそろ遊園地行こ。あんまり遅くなると、夕方のクリスマスパレードが終わっちゃう」
そして、俺がリップサービスした時と同一人物とは思えないほどの明るい笑顔で、そう言った。本当に、さっきの取り乱しぶりが嘘のようだ。
きっとこういうのを『小悪魔的』って言うんだろうな。怒ると魔女で、時々小悪魔的な彼女か…
…悪くないって言ったら、趣味疑われるかな。




遊園地には、もう何度ブルマと一緒に来たかしれない。数々の思い出と失敗の上に成り立ったホームグラウンド。それが俺たちにとっての遊園地だ。
「うーんとね、まず最初は…」
「まずは観覧車だろ。エクスプレスパス取りに」
「あっ、そうね」
俺たちの――というよりブルマにとっての遊園地にはルールがある。最後は絶対、観覧車で〆ること。何があってももう二度と、お化け屋敷には入らないこと。そして、俺がブルマの右側を歩くことだ。最後の要素は遊園地に限らないことだが、ここで教えられたことであるには違いない。そして俺はその教訓を心に刻むべく、遊園地では手を繋ぐことにしている。
嘘だ。
ほとんど本当だけど、最後のところだけ嘘だ。たかが手を繋ぐのに、そんな仰々しい理由をつけてたまるものか。実際のところは、ちょっと新鮮だから。それに、ブルマと最初に手を繋いだのが確かここだったし。…確かというか、事実ははっきり覚えているのだが、それは他言できないのだ。言えばブルマが怒るから。まったく、強いのか弱いのかわからないやつだよ、こいつは。おまけに、弱みを握っているはずの俺がどうしてビビらなければならないのかがわからん。
とにかくブルマは遊園地が好きで、俺も同じように好きなのだ。そして最近ではさしたるアクシデントもなく、楽しく過ごすことができる。そうだな、二番目にリラックスできる場所ってところか。おそらくブルマもそんなところだろう。少なくとも俺の目にはそう見える。
他の場所でデートしている時とは違って、遊園地ではブルマが強引に俺の腕を取ることはさほどない。腕を組んでいても適当なところで離すので、やはり適当なところで俺が手を取る。ブルマの手の小ささを実感できるこの行為が、俺は好きだった。ならばなぜいつもはそうしないのかと思われるかもしれないが(ブルマにそう言われたこともあるが)、それはちょっと…ちょっと照れくさいんだよな。
きっと俺は『遊園地』の持つ非日常性に感化されているのだと思う。さっきから『クリスマス』に感化されているように。
遊園地のゲート正面に立つ、巨大クリスマスツリー。イルミネーションの光に包まれたガーデン。街では異質に見えたサンタクロースも、ここではしっくりと風景に馴染む。あまりにも自然と浮き立っている遊園地の風景が、今日は浮き立っていてもいいのだと、むしろそれが自然なのだと、見る者に語りかけているのだ。
…まあ、語りかけられたからといって、必ずしもそれに応える必要はないのだが。
いくつかのアトラクションを楽しんだ後で、そうクールに構えざるを得ない現実が、俺の前に現れた。色濃くなる夕闇の中、行われたクリスマスパレード。正直なところ、着ぐるみや作り物の馬車などには俺はロマンを感じないが、まあこれはこれでありかな、と思い始めたところでブルマが言ったのだ。
「いいなー。あたしもああいう古風な馬車に乗ってみたいな。作ろっかな。昔風のエアキャリッジ…」
発言の前半部分に問題はない。同意しようとまでは思わないが、非難すべき点などない、害のないかわいらしさだ。問題は後半の現実感覚だ。
「おまえ、なんかそれおかしくないか?どうして馬車に浮遊システムが必要なんだ。馬車ってのは馬が引くものなんだぞ」
馬が引くから馬車。そのシステムこそが馬車の特質であり、たぶん良さ。至極当然のこの感覚を、ブルマは軽く吹き飛ばした。
「しかたないでしょ。馬じゃ遠くまで行けないもん。そこは作り物で我慢しなくちゃ」
「それ、ただの車だろ」
「いいのよ。気分なんだから」
一体それのどこに、気分の出る要素があるというのか。本末転倒もいいところだ。
『おまえ、案外バカだなあ』。喉元まで出かかった言葉を、俺はぐっと呑み込んだ。前に一度それを言って、ケンカになりかけたことがあったからだ。そういう意味じゃないのにな。融通の利かないやつだ。
とにもかくにも俺はその場は引っ込んだ。ブルマは夢見がちではあるんだが、ちょっとズレてるところがあるんだよな。なまじ科学に長けてるだけにな。そう思いながら。そんな風に少しばかり気分を殺がれたところで、さらにブルマが言った。
「じゃ、観覧車行こっか」
「あれ、もう終わりにするのか?」
「予定が変わったのよ」
「予定?」
なんか話が違わないか?今日は俺と過ごすんじゃなかったのか。
俺の気はますます殺がれた。何の気かと訊かれると困ってしまうが、とにかく殺がれた。でも、さっさと俺の腕を取って歩き出そうとするブルマをどうにかするつもりは、俺にはなかった。ただ、心の中でこう思った。
…またか。
まったく、気まぐれなんだからな。特に今日は、いつにもまして気まぐれだ。白と言ったり、茶と言ったり。俺には照れてみせたかと思えば、自分は平気な顔して言うし。…さっきまではあんなに乗り気だったのに…
俺は怒っていたわけではない。怒ってみたって始まらない。たぶんな、本人は気づいてないんだ。性格ってそういうもんだ。…まあ、正直なところを言えば、さっきまでのかわいさは何だったんだという気はするが、あれだってきっと気まぐれだ。だからといって、嘘というわけじゃない。さっきまでかわいさも本物。今の素っ気なさも本物。感情のわかりやすいところがブルマの最大の長所で、感情の波が激しいのが最大の短所なのだ。困ったもんだとは思うが、それ以上のものではない。そもそも俺には『プレゼント』という弱みがあるのだ。ここは甘んじて従おうじゃないか。
遊園地へやってきた時と同じように俺たちは腕を組みながら、遊園地を去るべく観覧車へと乗り込んだ。いつもよりだいぶん早い時間ではあったが、冬の早夜はすでに薄闇に包まれていた。
星空を霞ませる色とりどりのイルミネーション。その中に浮かび上がる大きなクリスマスツリーの星。隣ではブルマが俺の腕を掴むのもそこそこに、瞳を輝かせていた。
「きれーい…」
イルミネーションは空から見るべきだ。一時はそう思ったりもしたが、やはり違うな。視点などどうでもいい。これは誰かと一緒に見るものだ。
まだ都に来たばかりの頃、俺はこの『夜景を見る』という行為を、都会的なことの一つとして楽しんでいた。だが、今では少し違ってきていた。いつしか俺は、夜景を見るブルマを見ることを楽しむようになっていた。光の映る瞳に宿る輝きを見ることを楽しむようになっていた。ブルマが時折俺に見せる意識的なものとは違う、その自然な輝きを。
だから、すぐに気がついた。もしそうじゃなかったら見過ごしてしまっていたかもしれないが、この時ばかりは気がついた。そのきれいな青い瞳から、ブルマ自身の輝きだけが消え去ってしまったことに。
「…ブルマ?どうかしたのか?」
ブルマは答えなかった。先ほどから緩めていた手を今や完全に俺の腕から離して、ゆっくりと頭を俺の肩に凭れた。正面のガラスに映っているのは、どことなく気が抜けたような案じ顔…
…なんか、いつもと違うな。
いつもはたいがい、ここでキスをせがんでくるものなんだが。あからさまに意志を湛えた大きな瞳で俺を見て。でも今は、顔を上げる気配もない。…俺、何かしたかな?気分を損なうようなことをした覚えはないんだが。でも、気が乗っていないことは確かなようだし…
肩を抱くべきか否か。俺はこの時、真剣に悩んだ。気が乗っていないからといってまさか怒りはしないだろうが、急かすみたいで悪いよな。そして決断をせぬままに、結論を押しつけられた。
微かな違和感を察知した時には、すでに微振がきていた。次に宙に投げ出されるような感覚と大きな振動がやってきて、すぐにゴンドラが停止した。揺れの残るボックスの中、立ち上がろうとしたブルマを留めていると、アナウンスが流れた。
「…観覧車をご利用のお客様にご連絡します。ただいま電源系統の故障により一時停止しております。現在、復旧作業を行っております。ご利用のお客様にはご迷惑をおかけし申し訳ございませんが、復旧まで今しばらくお待ちください…」
「えー!ひっどーい!8時からクリスマスドラマ観ようと思ってたのにー!」
アナウンスが終わる間もなく、ブルマは叫んでいた。瞬時に俺の手を撥ねのけ、ベンチから立ち上がりながら。
…おまえ。予定ってそれか。俺のことよりドラマかよ…
俺は呆れた。すっかり呆れた。この以上ないというほどに呆れた。だが、怒りは湧かなかった。
こんなこと、もう慣れっこだ。
「じゃあ、帰るか」
ある意味ではやりやすさを感じて、俺もベンチを立った。考えていることがわかってしまえば、後は簡単だ。俺はただ対応するだけだ。
「うまい具合に電子ロックも外れてるな」
ま、外れてなくとも外せる人間がここにはいるが。そんなことを考えられるほどに、俺は余裕があった。そうなれたからこそ、帰って来たのだ。
少しばかり感慨を感じながらゴンドラのドアに手をかけると、そのロックを外せる人間が背後から叫びたてた。
「まさか伝っていく気!?あんたはよくてもあたしは無理よ、そんなの!」
振り向き見たブルマの顔には、すっかり生気が戻っていた。その生気が戻った瞬間のことを思い出して、俺は少し意地悪な気持ちになった。…いや、意地悪じゃないよな。
当然の仕返しだ。
「ちょっと!無理だってば――」
続くブルマの声を無視して、ドアを開けた。すぐさま身を翻すと、甲高い叫び声が響き渡った。
「きゃあぁあぁぁあぁぁーーー!!」
その声が消えないうちに、ゴンドラの真上に回り込んだ。気配を殺す必要はなかった。そんなことをせずとも気づかれないだろうほどに、ブルマは慌てていた。電光石火の勢いで開いたドアの端から身を乗り出すブルマを、俺は半ば楽しく半ば心配しながら見守っていた。…よもや落ちるんじゃないだろうな?まあ、落ちても別に平気だけど。
「……嘘……」
やがて完全に身を固まらせたブルマの口から蚊の鳴くような声が漏れたので、俺はさすがに姿を現そうという気になった。逆さまの態勢から腕を伸ばして前髪を梳いてやると、ブルマが大きく身動ぎした。文字通り目を丸くして俺を見上げるブルマに向かって、俺はとどめの一言を吐いてやった。
「なんてな」
この時のブルマの表情といったら。驚いてるんだか怒ってるんだか焦ってるんだか呆れてるんだか一体何なんだか。いっそ訊いてやろうかと思ったくらいだ(さすがにそれは意地悪過ぎるかなと思ったのでやめておいた)。
軽く蔑ろにされた屈辱を、こうして俺は軽く晴らした。そうさ。どうせこの程度の屈辱だ。目には目を。歯には歯を。目を瞑ってもいいような現実には、目を瞠らせるような事実を。そのまま黙って宙で一回転して正面から目を合わせると、ようやくブルマは口を開いた。
「あんた何考えてんの!一体何やってんの!何なのそれは!どういう仕掛けよ!?」
「仕掛けなんか何もないよ」
「何言ってんの!仕掛けがなくて浮いたりできるわけないでしょ。調子に乗ってないで、さっさと教えなさいよ!!」
「いや、本当に何も。ただ普通に飛んでるだけだ」
そう、『普通に』。今朝になって俺はようやく、完全に普通の状態で飛ぶことができるようになった。だから、帰ってきたのだ。所謂、一区切りってやつだ。
ブルマはすでにさっきからそうしていたところを、さらにまじまじと俺を見て、大きく大きく口を開けた。
「キッザーーーーー!!」
夜空に響き渡る大音声。でも俺はそれよりも、その声の明るさの方が嬉しかった。
「そうかな」
「どこの世界に『ただ普通に飛んでるだけ』の人間がいるのよ!」
「ははっ」
帰ってきてよかった。俺は本当にそう思った。想像していたよりずっと楽しいな、これは。空を飛べるようになったということよりも。飛んでいる俺を見ているブルマのぶっ飛んだ反応が。うーん、新鮮だ。
俺の笑いにブルマは怒り顔で反応した。瞬時に眉を上げて、その場に勢いよく立ち上がった。とはいえそれがいつもの仁王立ちではなく、どことなく危なげな様子だったので、ブルマをドアから離す必要を感じて、俺はゴンドラ内に足を踏み入れた。
「で、どうするんだ?帰るのか、帰らないのか」
端的に俺が言ってやると、ブルマもまた端的に答えた。
「もちろん帰るわよ!」
ブルマのその強気な声は、僅かに怒気を孕んでいることを除けば、俺の想像していた通りのものだった。そう言うだろうと思ってたよ。ブルマは絶対に怖がらない。そう思ったからこそ、俺も提案してみたわけだ。反応がいいって、嬉しいなあ。
一時殺がれていた俺の気は、今やすっかり戻っていた。だからごくごく自然な感覚で、ブルマの体に手を伸ばした。するとブルマが途端に俺の手を払い除けた。
「…おい、ちょっと、ブルマ…」
「一番上から見下ろしたいの!」
言うなり俺の肩に手をかけて、勢いよく圧し掛かってきた。その胸を思いきり顔に押しつけられながらも、俺はどきどきしたりはしなかった。むしろ呆れが湧くばかりだった。
まったく、色気のないやつだな。
普通、ここはお姫様抱っこだろ。そもそもこれは俺の感覚ではなく、前にブルマ自身が指南したことだぞ。何の時だったかな、あれは。怪我した時だったか?いや、違うな。確かどこかで転んだか何かしただけの時だ。…本当に気まぐれなやつだ…
好奇心が強過ぎるのも考えものだな。こいつ、女としての感覚よりも、絶対に人間或いは科学者としての感覚の方が強いぞ。だから、馬車に浮遊システムを導入しようとしたりするんだ。
そう思いながらも、俺は一方では悪い気はしていなかった。ブルマが手放しで、俺のしていることを楽しんでくれているということがわかっていたからだ。そうさ。それくらいのことはわかるさ。
だから俺は、夜空を思いきり高く飛んだ。都に帰ってきた時よりも。昨日初めて、苦もなく飛べるようになった時よりも。一度は俺しかいないことに満足した、あのアドバルーンを遥か下に。いつまでも届かない星へ向かって。
「すごいすごーい!人間って本当に飛べるんだ!」
「大げさだな。何度も見たことあるだろ」
それまで宙を見る一方だった目を俺に戻して、ブルマが笑った。いつまでも素直に感激してくれるその声を、俺はことさら軽く流した。武道家のプライド?それもある。でも――
大部分は…………照れだ。
やっぱり、目を見て言われると照れる。何しろ、あまりないことだからな。ブルマが俺をこうも素直に褒めるというのは。
すると、そういう俺の繊細且つ充足した感覚を逆撫でするようなことを、ブルマが言った。
「そうだけど、見てるのと自分が飛ぶのは違うもん!本当にまだ信じられないわ。よりによってあんたが飛べるようになるなんて」
「どういう意味だ、それは」
「そんなことあんたがかわいそうで言えないわよ」
「…落とすぞ?」
「できるもんならね」
する気もなしに俺は言った。ブルマもきっとそれがわかっていて、俺に吹っかけた。そうと思っていながら、俺はやっぱりやらなかった。腹は全然立たなかった。
それでいいんだ。こういうのはな、言うのが楽しいんだ。するのが楽しいわけじゃない。――それに、もし万が一本当にそんなことをしてしまったら、一体どんな怖ろしい展開が待ち受けていることか。急転落下とはこのことだ。…俺、うまいこと言うな。
思わず余計なことまで考えてしまった時、ブルマが頬にキスしてきた。どうやら気分が乗ってきたらしい。そろそろ帰るべきか否か。俺は真剣に悩み始めた。だが決断せぬままに、ブルマに機先を制された。
「ねっ、もっと遠く行って。そうね、都が全部見渡せるところまで。それから、お姫様抱っこして!」
「でも、帰らなくていいのか?…予定があるんだろ」
だからというわけではないが、言えば絶対に気分を損なうであろうことを、俺は口走ってしまった。どうしてなのかは自分でも…………いや、わかってる。俺もたいがいしつこいな。
ブルマからの返事は、俺を恥じ入らせると共に喜ばせもした。
「いいのよもう。そんなのどうでも」
そうこなくちゃな。ここでもしそちらを優先されていたら、俺は本当の本当にショックを受けていたことだろう。
もう、何があろうと俺の気は殺がれそうになかった。帰るも帰らぬも、飛ぶも飛ばぬもブルマ次第。
俺はただ対応するだけだ。


と、思っていたのだが。
「ねえ、いつ飛べるようになったの?飛んでどこか行ってみた?」
「いや。今朝がた飛べるようになってすぐに帰ってきたからな」
「そっか。じゃあ明日飛んでどっか行こ!」
小一時間ばかり経った頃、俺の舞空術が移動手段扱いされ始めた。…いや、まあそれはいい。実際、俺も移動手段として使っているわけだからな。人間は慣れる生き物なんだから…
だから、俺は(それほど)気を殺がれたわけではなかった。ただ、本気で心配になってきた。
「午前中はうちでのんびりしたいから、午後からでも――」
「なあ、そろそろ帰らないか?」
話を遮って俺が切りだすと、ブルマは意外そうな顔をして、小首を傾げた。
「あ、疲れた?」
「そうじゃないけど。これ以上外にいると体が冷えるだろ」
寒さのせいか単に染まっているだけなのかちょっと判断つかないが、ブルマの頬がさっきから赤い。あまりに楽しそうだったから黙っていたが、さすがにそろそろ帰らないと。
俺のこの下心なしの純粋な気遣いを、ブルマは軽く蹴飛ばした。
「もうとっくに冷えてるわよ。当然、この後は暖めてくれるんでしょ?」
おっと、そうきたか。
俺は少しだけ意表を突かれた気分を味わったが、浮足立ちはしなかった。そうあれる程度の小さな余裕が、この時の俺にはあった。一つには、そう言うブルマの瞳が正面からのものではなく、斜めからのものであったこと。もう一つにはブルマの笑顔がどことなくはにかんだものに見えたこと。さらに一つには、この空。
遅ればせながらも、新たな武の領域に踏み込むことができたという自信からだ。
とはいえ一方では、何ともばつが悪い思いをした。ブルマがまったく何も感じずにその言葉を言ったのではないということが、その顔色でわかったからだ。それで俺は少しだけ考えて、そのまま無言を通した。ここで何か答えるほど、無粋なことはない。ブルマは俺の答えが欲しいわけじゃない。それくらいのことはわかった。
そのまま黙ってブルマの冷たい頬に触れながら、俺は今日一日のことを思い返していた。今日一日のブルマの言動を。そして最後に、帰ってくる途中で見たあの一文を思い出した。
『MERRY CHRISTMAS!――I want to see his face with which the lover is pleased. ――(恋人の喜ぶ顔が見たい)』
…そうだな。俺は今日一日貰いっぱなしだった。ブルマはいらないと言っていたが、やはりそういうわけにはいかない。
ここからは俺の番だ。とりあえずは、キスからだな。
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